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コラム

知財風土記

第32回 
「帯広・十勝」

 モール温泉という湯がある。北海道の十勝川温泉などで出る黒ずんだ琥珀色の湯で、肌がすべすべし、美人の湯ともいわれて人気がある。この温泉を訪ねて、11月の末、北海道に飛んだ。
 帯広空港から冬枯れた平野をバスで抜け、帯広駅に着く。ちょうど昼飯時なので、駅舎の中に豚丼の店を見つけて駆け込んだ。薄切りの豚肉をウナギのかば焼きのようにタレにつけて焼き、炊きあがった飯に乗せた丼で、うまい。豚は開拓民がかつてゴミや排泄物の処理と食用を兼ねて各家庭で飼っていたといい、そうした中で生まれた料理だろう。北海道の開拓民は先住民のアイヌたちと摩擦を起こすことが多かったが、この辺はそれがなく、融和のうちに開拓が進んでいったといわれる。
 店を出ると、目の前のホテルが天然モール温泉を掲げた看板を出している。再びバスで十勝川温泉を目指し、当地のホテルに宿を定めた。
十勝川に架かる吊り橋  このあたりにはもともとアイヌが薬の沼と呼んでいたぬるま湯の出るところがあり、冬でも凍らないことで知られていた。20世紀に入って本格的な開発が始まり、旅館や観光施設が増えて1930年代に十勝川温泉と命名された。
 モール温泉に入ってみる。泥炭層を抜けてくるので、湯は太古の植物由来の有機物を含む。モールはドイツ語で泥炭を意味し、ドイツのバーデンバーデンがモール湯で名高い。日本では帯広平野を中心にこの十勝川温泉のほか、石狩平野や最北の豊富町、さらに九州にも出るといわれる。けれども珍しい湯の質であり、平成16年には北海道遺産に選定されている。湯船への出入りを繰り返し、旅の疲れをいやした。
 モール湯を利用した物産の開発も進んでいる。顔面を覆う、十勝川モール温泉マスク、入浴剤の、日本の名湯十勝川モール、ハンドクリームの、スパモール、そしてモール湯の色をしたまんじゅうなどの商品が土産物で並ぶ。これらを商標や意匠などの適切な知的財産として保護していくことが必要だろう。
 ところで気候温暖化の影響は北海道でも顕著で、以前はまずいといわれていたコメが、最近では、ゆめぴりかなど、うまいコメの代表になっている。コメだけではない。ブドウも栽培種が多種になり、それにつれてよく知られた十勝ワインのほか、新しいブランドのワイナリーが増えているらしい。ただその一方で、人口減にともなう働き手不足が深刻な状況にある。もともとブドウの収穫には人手がかかり、ヨーロッパなどは移民の季節労働者に頼っている。北海道もこの人手不足に向き合わざるを得ない。小樽市の北海道ワインでは、ブドウ畑に作業用のロボットを備えた小型電気自動車を導入しようとしている。ドローンやロボットの力を借りないと農業の経営が成り立たない時代が来ているのだ。北海道の開拓がはじまって百五十年たち、帯広、十勝も例外ではない。
 十勝川温泉が世に知られていく過程では、クマが人を襲うようなことも起きていたが、人の出入と酪農が定着していくにつれ、出没は止まった。その一方でエゾシカが増え、道路に進出することがよくあるようだ。夜間だと車のライトに注目して留まり続ける性質のため、交通事故につながりかねない。帯広、十勝はこうした問題にも向き合わされている。
 (2023.12)

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