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コラム

知財風土記

第22回 
「北海道と地場産業」

 知財を活用した地場産業の振興、というテーマで講演するため、5月の末、札幌へ行った。札幌商工会議所の依頼によるものだ。
 羽田からの機中、千歳近くで地上を見下ろす地形がモニターに映し出された。昨年夏の地震の影響か、緑の丘が櫛状に引っかかれた地肌をさらしているところが続く。いまだにその時の爪痕が残っているのだろう。
イクラを存分に盛ったイクラ丼  宿に落ち着き、夜はすすきのの居酒屋で土地の料理を楽しんだ。鮭のイクラや刺身、ジャガイモなどの海と陸の食材を使ったうまいものが並ぶ。北海道はまさに食の王国といっていい。
北海道神宮  翌朝、講演を前に北海道神宮を訪れた。明治2年の創建で、開拓の守護神とされてきたところ。おそらく北方のロシアを念頭に置いていたろう。文化8年にはロシアのディアナ号艦長を松前藩が逮捕し、翌年には逆に高田屋嘉兵衛がロシア船に捕らわれるという事件も起きている。こうしたロシアの南下に伴う危機意識の高まりから、江戸時代、たびたび蝦夷地調査隊が派遣されている。松浦武四郎はその活動で知られ、明治2年、政府から開拓判官に任じられた。同年、松浦の提案に基づいて蝦夷地は北海道と改称され、先住民のアイヌが住む地に、本土から移住した人を中心とした開拓が進められていく。
 ところで北海道は、一種文化交流の場でもあり、その開拓には明治期に主導権を握った薩摩の勢力が強く及んでいる。黒田清隆を頂点とする開拓使は、産業育成などの事業を推進し、なかでもお雇い外国人の招へいと彼らによる技術の伝習は、その後への影響が大きかった。札幌農学校や開拓使麦酒醸造所は現在の北海道大学、サッポロビールに連なっている。
 もっとも薩摩はすでに江戸時代、昆布やいりこのような特産品を鹿児島の地に集め、それをさらに中国などへ輸出することで利益を上げていた。このように日本列島の南北は以前からリンクしている。
「知財を活用した地場産業の振興」講演  講演は札幌グランドホテルの会議場で行われ、地元企業の代表が80人ほど集まって盛会だった。まず知財保護の歴史を、古代ギリシャからたどっていく。植民都市シバリスで紀元前6世紀に始められたという料理の発明への特許、ルネサンス期ヴェネチアの特許、近代イギリスの特許条例、明治期の専売特許条例などが、すべて産業振興策と結びついていたことに触れる。
 次いで特許、意匠、商標、著作権や植物の育成者権といった知的財産権の種類に及び、それらが経済活動に果たす役割を話す。特許に焦点を絞り、制度の概要からだんだん中身を深めていく。最近の審査基準では、北海道に関係の深い食品特許を例に、物として同じであっても使い道が異なれば別発明とみなす基準の改正にも触れた。骨強化用のヨーグルトや、歯周病予防用ジュースなども、新規性、進歩性があれば、特許となる可能性が出てくる。この基準の改正によって、食品関連の技術開発が当地で進むことが期待される。
 商標制度では、北海道に関連した地域団体商標の例を挙げる。これも地場産業の振興に活用できるだろう。海産物や肉用牛を、どんどん地域のブランドとして押し出してほしい。さらに特許、意匠、商標が連携を組めば、その保護は一層強化される。
 北海道の中央に位置する東川町は、JAひがしかわが中心になって、ロシアへの農産品の輸出に取り組んでいる。リンゴや桃が中国、台湾などに高級品として輸出される例は近年多くなったが、北海道から目と鼻の先にあるロシアとの通商も、本格化しそうだ。
 寛政4(1792)年、ロシアのラクスマンが、保護下にある大黒屋光太夫の返還に際し日本との交易を要求したものの、幕府の禁は説かれなかった。2世紀を経て、北海道とロシアが地域レベルの経済的な交流を深めようとしているのはいい話である。
 (2019.8)

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