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コラム

知財風土記

第21回 
「アメリカ建国とボストン」

 アメリカ建国の歴史を刻むボストンに行ってきた。5月末の国際商標協会INTAの総会に出席するためで、この地を訪れるのは3度目。今回はその歴史をたどるいい機会だった。
 市の中心に、オールドサウス・ミーティングハウスというレンガ建ての建物がある。
オールドサウス・ミーティングハウスの外観 米独立に先立つ英植民地の時代に建てられたピューリタンの礼拝堂で、独立につながる町民の集会が頻繁に開かれたところという。1世紀後、空き家となり、取り壊しを待つばかりだったところが市民グループによる保存運動によって難をのがれ、現在は集会所兼博物館として使われている。
室内を使った授業の様子  足を踏み入れると、ボストン茶会事件に至るいきさつが、展示でたどれるようになっていた。小学生の団体が見学に来ており、一人の子が演壇で声高らかに主張をぶつと、まわりがはやし立てる。討論の実習をしているようだ。子供の頃からこうやって多数の聴衆を相手に意見を言う練習を積んでいくのだろう。
 ボストン茶会事件というのは、英本国の課税政策に反対する人たちが、課税品とされた東インド会社の輸入する茶箱をボストン湾に投げ込んだ事件をいう。夜中に原住民モホーク族の扮装をして起こした事件で、湾自体を茶のポットに見立て、この行為を茶会と冗談で呼んだものだ。ティー・パーティー(茶会)は、現代でも小さな政府を目指す保守派の代名詞になっている。
 室内の展示では、黒人奴隷の少女が読み書きの学習によって詩人となっていく実話の紹介が目を引いた。またボストンは、アメリカ独立後も南北戦争に至るまで、逃亡奴隷をかくまう地であったらしい。
 ボストン湾には当時の帆船のコピーが係留してあり、茶会事件を回顧する博物館になっている。入場者が実際に茶を海に投げ込むショーがあり、扮装を借りたモホーク族にちなんで、記念品には鳥の羽が渡される。
 名所といえば、ボストン美術館を外すことはできないだろう。岡倉天心が東洋美術の目利きとして収集にあたったそのコレクションは立派だが、訪れた日はたまたま開催中のロートレック展に、より多くの時間を割いた。館を出たところに、近年造営されたという岡倉天心記念の日本庭園、天心園がある。
 つつじが花盛りで新緑も目を楽しませたが、竹囲いが壊れたままになっているのが残念だった。せっかくの文化交流も、維持管理が行き届かないと元の木阿弥になる。
美術館に隣接する天心園の入り口 庭園の内部
 さて、INTA会場の国際会議場は、各国の知財事務所による展示でにぎわっていた。インドや中国の知財事務所は多くのブースを抱え、お土産品付きで人を呼びこもうとしている。知財の世界も、アジアに比重が移ってきていることを感じさせる。ミャンマーなどはこれから知財保護を本格化させようというのだろう、そのブースが存在感を放っていた。
 壇上に数人のパネリストが登り知財を議論しあう会議が多く開かれ、ここではデータの保護が大きな話題となった。そしてAIは商標の分野でも、創造と検索にますます威力を発揮するだろう、という見方が強かった。世界では2年ごとに総データ量が倍増しているとの分析や、そうした中で価値を生み出す仕事とは何かを問い続けるべきだという助言もあった。アマゾンの商標担当者は、不正商品との対抗に、AIがより洗練された役割を果たすようになると予測している。2018年にアマゾンは300万件の不正な広告掲載を、消費者の閲覧以前に排除したという。ビッグデータを収集する企業として、そのくらいは簡単にできるのだろう。AIは人の労働を奪うのでなく、新しい仕事を作るというのが、会議を通じた雰囲気だったように思われる。日本もこれから、AIの積極的な利用の時代に入るだろう。
 会期中、ドイツの特許事務所が主催したパーティーがハーバード大学の同窓会館で開かれ、出向いたついでに大学の構内を歩んだ。夜も更けて学生を見かけることは少なかったが、キャンバスの落ち着いた雰囲気を好ましく思った。
 (2019.6)

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