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コラム

知財風土記

第17回 
「アボリジニーの大地豪州」

 10月の中旬、シドニーで開かれた国際知的財産保護協会(AIPPI)の総会に行ってきた。日本と反対の気候だから暖かいと思っていたら、意外に雨勝ちで、肌寒い陽気だった。
   国際会議場(写真1)で行われたその開会式は、先住民アボリジニーの人たちによる楽器の演奏と舞踊で始まる。背丈のほどもある太い木をくりぬいたディジュリドゥという管楽器が、舞台上からアンプの力を借りながらはらわたを絞り出すような音を響かせた。しばらくすると踊り手が打楽器を打ち鳴らして加わり、舞台に賑わいを添える。ディジュリドゥの吹奏は聞いたことがあったが、踊りとの絡みを見るのは初めてで、こんな使われ方をしているのかと思った。演奏が終わり、代表が「自分たちの芸能を鑑賞してくれてありがとう。オーストラリアの大地を踏んだ皆さんを歓迎する」とあいさつして、型通りの式に移った。
   会議場はシドニー湾沿いにあり、シドニーの国際会議場岸辺には長い商店街のモールが海に臨んでいる。シドニー名所で、訪れる人も多い。通路を歩むと壁の装飾に、見覚えのある、オタマジャクシが群れているような模様が出てきた。夢を形象化した図を描くというアボリジニー・アートの一部を取り込んだものだろう。彼らの伝統がこうして現代建築の内部デザインに取り込まれている。 
 豪州大陸はもともとアボリジニーの大地だったが、イギリス人等、白人の進出で居場所を失っていく。現在彼らは政府の保護下に置かれ、米大陸の先住民のような状況にあるといっていい。
 会期中のバス旅行で、世界遺産ともなっている近郊の名所、ブルーマウンテンズを訪れた。砂岩の台地が風雨の侵食でえぐられて深い谷と山を形成し、全体をユーカリの緑が覆っている。アメリカのグランド・キャニオンに似た地形だが、木々の濃さが違う。その一角に三姉妹と呼ばれる岩が並び立ち、ひときわ目を引くところがある。三姉妹の岩部族対立で一緒になれない恋人同士にからむアボリジニーの神話が、この岩にまつわり語り継がれているとガイドから聞いた。
 オーストラリアの中部に、砂漠の中からいきなり盛り上がった山のような岩の塊がある。エアーズロックの名で知られ、アボリジニーたちはウルルと呼んでいる。これが2019年の10月末から登れなくなるという。観光業者には痛手だろうが、ここは古くからアボリジニーの聖地で、土地の所有権も彼らにあることが確定していた。こうした動きから、アボリジニーの復権が少しずつ進んでいることがうかがえる。
 谷を見下ろす高台にあるレストランで昼食となった。隣席はバルセロナから来た夫人たちで、カタルニア独立の賛否を問う投票と、それに伴う騒ぎが起こる直前のこと。運動をどう思うか尋ねると、二人の夫人とも独立支持派で、当然というような返事をする。これには意外な思いをしたが、住民の多くがスペインへの帰属を望んでいないのも事実なのだろう。どこへ行っても多数派の圧力に押しつぶされまいとする少数派の主張がある。
 さて、AIPPIの総会では、職務発明、グラフィカルユーザー・インターフェイス、コンピューター関連発明の特許性などを統一議題に、各国比較が行われ、集約した意見が民間団体の要望として、国連機関のWIPOに送られている。
 また、並行して行われたパネル・セッションにも、興味深いものがあった。「知財ビジネスとビッグデータ」がテーマで、パネリストの話は人工知能とビッグデータの結びつきが、世の中を急速に変えていっているという認識を共有していた。フロアーからの質問には、ビッグデータの保護の仕方、人工知能による成果保護のあり方などがあったが、国ごとに違いがあるようであり、この分野では、一層の議論の深まりが必要だと思われた。
 帰国の日、ホテルから空港に送ってくれたタクシーの運転手はインド出身の若い女性で、里帰りもよくするようだが、このシドニーが好きだという。オーストラリアの人種構成は確実に変ってきている。 
  (2017.11.14)

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