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コラム

知財風土記

第14回 
「イタリアの古今」

 国際知的財産保護協会(AIPPI)の総会が9月中旬、ミラノで開かれ、参加した。直前に中部イタリアで死者300人近くにのぼる大きな地震が起き、中世の面影を留めるアマトリーチェなどに破壊の爪痕を残している。北部の町ミラノの鉄道駅にも義援金を募る掲示があり、被害のほどが思われたが、この地は平穏無事で、いたるところに観光客があふれていた。
  会議の初日、目を見張るような開会式があった。見本市などが行われる展示場の一室には、ファッションショーのランウェイ(花道)が置かれ、演壇ではなくこの上で、スピーチやアトラクションが行われる。AIPPIのイタリア部会長の挨拶も、WIPOの事務局長の基調講演もすべてこの上だ。そこへイタリアを喚起する映像として、ボッティチェリの絵画、現代の映画監督などの名前や、古代、中世から近代の建物がコラージュされて、室内を駆け巡る。それはイタリアが古くからの歴史を持ち、現代にも創造力を発揮し続けていることを強くアピールするものだった。中で度肝を抜いたのは、ワイヤーに吊るされてダンサーや歌手が空中で踊り、歌い、ギターを弾く場面だ。これを目の当たりにする迫力は、当分脳裏を去りそうもない。
  翌日、オペラで名高いスカラ座を使ったAIPPI参加者のためのコンサートがあった。ミラノのスカラ座改装のためしばらく立ち入りできなかった劇場で、敷居をまたぐのはずいぶん久しぶりになる。リッカルド・シャイー指揮のスカラ座管弦楽団によるケルビーニ、ヴェルディ、ロッシーニのオーケストラ曲を並べたプログラム。ケルビーニの曲を聴くのは初めてで、この作曲家がパリ音楽院の院長をしていた時、学生のベルリオーズが彼を天敵のように嫌っていたことがベルリオーズの自伝「回想録」に出てくる。革新派のベルリオーズは旧弊なケルビーニとそりが合わなかったのだろう。その名前は頭にあったが、ケルビーニの音楽がどんなものかは知らなかった。演目のシンフォニア・ニ長調を聞いてみると、決して悪くない。活気のある確かな管弦楽の書法で、ヴェルディやロッシーニに連なるイタリアロマン派の響きを感じさせた。もっと演奏されていい作曲家といえよう。
 休憩時、席の隣のトルコから来た女性弁理士と話をする機会があった。度重なるテロや政府による反対派の逮捕などで混乱が続く国だが、そんなときにも出かけてくる彼女に同情し、行動力を好ましいと思った。 
  ファッションの中心地ミラノという地の利を得て、会議の議論はさまざまに展開している。なかでは意匠をめぐる議題に引き付けられた。意匠制度は一般に新規性や創作非容易性のあるものを保護し、例外として、ある機能のみを実現するための形態は、保護の対象にしないこととしている。アメリカが最も明確にそのような運用をし、日本にも同様な意匠法の規定があるが、機能を除外する程度や基準は世界一様でない。同じ機能を実現する方法がいくつかあるときは、その部分の装飾性を前提に意匠保護を及ぼしてよいとするのが普通だ。機能性の判断に際しては、視覚に訴えるすべての部分を、まず考慮すべきであろう。AIPPIのこうした議論が契機となって、運用が世界規模で調和に向かうことが期待される。
  ミラノの後、世界遺産が多く残る東方のヴィチェンツァを訪れた。ルネサンスの大建築家パラディオの手がけた建物が多く、パラディオの町としても知られる。彼が古代の円形劇場から想を得たというオリンピコ劇場には、錯視を利用した遠近法による舞台装置があって、積み木細工のように手が込んだものを客席から眺めることができる。どんな作品が演じられたのだろうか。また、市の中心にある集会場バジリカは、白い柱とアーチ状の回廊の連なりが、快いリズムを生んでいる。
  圧巻は郊外にあるロトンダと呼ばれる個人の邸宅で、四方から眺めたシンメトリーがどっしりとした感じを与える。ロトンダの正面ゲーテは「イタリア紀行」の中で、どこから見ても壮麗な景観を呈すると、ロトンダの印象を記している。薄暮の光に照らされた建物を一周し、四方の田園風景を眺めながら、しばらく至福の時を過ごした。 (2016.11)

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