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コラム

知財風土記

第10回 
「ケベック州」

トロントでAIPPI(国際知的財産保護協会)の会議が開かれた機会にケベック・シティーまで足を延ばした。カナダは英語に加えてフランス語も公用語にしており、フランス語圏のケベック州はフランス文化の香りが強い。
ニュー・イングランドといえばアメリカ東海岸のボストンなどを中心とする一帯だが、カナダの東北部はヌーヴェル・フランスと呼ばれている。英語ではニュー・フランスだ。
17世紀以来、フランスとイギリスは新大陸で植民地の獲得競争を繰り広げていた。セント・ローレンス川(フランス語風に言えばサン・ローラン川)沿岸のケベック要塞からセント・ローレンス川を見下ろす州は、先にフランスからの入植者を迎えた。その後イギリスからの入植者と利害で対立し、英仏間の戦争にまで発展する。さらにそのイギリスから独立したアメリカがこの地をうかがうようになり、緊張が高まっていく。川を見下ろす崖の上の星形要塞は、アメリカ軍の侵入に備え19世紀の始めに建設されたたもので、現在も軍事基地としての機能を保っている。
城壁に取り囲まれたケベック・シティー旧市街にあるユルシュリンヌ派修道院の付属博物館に入っ旧市街に入るところの上得h機に設けられたサン・ジャンの門てみる。17世紀の前半、フランスからやってきた3人の修道女がここに根を下ろし、女子教育の中心地になっていく過程を、展示でたどる。そこでは宗教教育以外に、家事や娯楽、音楽などが教えられ、文化センターとして規模を拡大していく様子が見てとれる。
築100年以上の建物に陣取る有名なパブにも立ち寄った。空席を求めて行列ができるほどの人気店だ。やっと席が空いてカウンターに腰を下ろし、地ビールを注文する。運ばれたグラスを口にする間もなく、右隣にほぼ同時に座った男が英語で話しかけてきた。フランス語で答えると、相手はちょっと怪訝な顔をしたが、すぐフランス語に切り替え、以後、フランス語で会話が進む。男は40代の後半か、州政府の技術職で、森林資源の保護と活用が仕事らしい。娘が最近東南アジアを旅行し、東京に立ち寄ったところえらく気に入ったので、近くまた訪れるという。ロベールと名のり、気のいい人物だった。
パブを出て、バスの行先を尋ねた若者も、英語で返事してきた。またフランス語に切り替えて会話を続ける。フランス語が唯一の公用語とされるケベック州でも、英語の使用が広がっているようだ。周りはフランス語中心だが、自分は職場で英語を話すのだとこの若者はいう。英語系住民が少数派ながら経済を支配しているケベック州で職を得るには、やはり英語が欠かせないのだろう。
一国内で言語の違いが地域の経済格差につながるのは、カナダに限らない。ベルギーやスイス、スペインなど、ヨーロッパには多くの例があり、分離独立運動につながりやすい。ケベック州もその例にもれなかった。 
トロントはオンタリオ州の州都で、ここは英語圏といっていい。それでもAIPPIの開会式で第1声を発した議長や来賓は、多くフランス語で語りだした。途中で英語に変わっていくのだが、2か国語を公用語と定める国の公式行事はこんな風にして進められるのだろう。
さて、AIPPIトロント会合の議論は、知的財産保護を目指す世界の動きを縮図のように見せていた。医薬の第2用途クレーム、国際商標制度の基礎出願、知的財産の実施許諾と破産などが、主な議題に並ぶ。また、ハーグ条約による国際意匠制度の進展も話題になった。
医薬の第2用途が特許対象とされるとき、その明細書には効用がどの程度の確かさで記載されているべきか。開示の水準を高くするか否かで、特許性が左右されてくる。この水準が高いカナダではアメリカの製薬企業による特許出願が拒絶された例があり、アメリカには不満だ。国の産業政策ともリンクしているが、こうした明細書の記載ぶりを世界で調和させていくのも今後の課題であると、会議の一端から知ることができた。(2014.10)

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