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コラム

知財風土記

第9回 
「ヨーロッパの知財保護」

ヨーロッパで知的財産を保護する仕組みが変わろうとしている。9月初旬にヘルシンキで開かれたAIPPI(国際知的財産保護協会)のフォーラムに参加していて、そのことを強く感じた。実際この地にいると、経済の停滞、ユーロ危機とか、共同体の足並みの乱れとか、芳しくない話が多い一方、どこか余裕のある生活ぶりも目にするので、どちらが本当なんだろうかと思えてくる。
それはともかく、共同体の統一特許制度は近く発足することが確実で、車の両輪の関係にある統一裁判所の規則も、詰めの段階に入った。
ヨーロッパで保護を求める現在の特許制度は複雑でコストがかかりすぎ、使い勝手がいいものではない。ミュンヘンとハーグで行われるヨーロッパ特許庁の審査により出願が特許に値するものと認められたとき、その特許は初めに指定した国ごとに配分される。あとはその特許がどういう運命をたどるか、国ごとに判断されるのだ。こうして独立した国ごとの特許となるため、費用の払い込みを含め維持、管理は大変で、ヨーロッパ全体で見たとき、アメリカや日本などとの産業競争力を削ぐ結果となっている。そこでヨーロッパ全土の統一特許制度の必要が叫ばれながら、何十年か議論は空転したままだった。原因はこの地で使われる言語の多様性にある。
商標や意匠は一足先にEU全体の統一制度が実現し、実際、運用もうまくいっている。ところが思想を表現する言語に頼る特許は、共通言語がなく、統一が実現しなかった。そこへ事実上の英語優位を認め、英語だけの手続きを可能とする制度の設計で、ようやく共同体の統一特許が近く生まれるところへ来た。もっともイタリアやスペインはこの話に乗らず、依然、参加を拒んだままだ。
合意によると、統一特許はこれまで同様ヨーロッパ特許庁が審査したものへ、加盟国に共通の効果が与えられる。したがって特許付与後の権利の移転や、クレームの訂正、一部放棄などがすべての加盟国に及ぶことになる。特許維持の年金は、ヨーロッパ特許庁に払い込めばよい。また、旧来のヨーロッパ特許制度はそのまま存続し、共同体統一特許との選択が可能とされる。
もう一つの車輪となる統一特許裁判所をめぐる動きはどうか。この方はロンドン、パリとミュンヘンに中央裁判所が置かれることになろう。ただし、裁判官は共通で、この3か所を移動して審理する。加盟国や地域には、ほかに支所も置かれる。また控訴審は、共同体裁判所のあるルクセンブルクとされる。
侵害事件が起こったとき、基本は書面審理で、被告が不利にならないよう、使用言語の選択肢が複数ある仕組みも考えられた。支所の裁判所で扱いきれないものは、中央へ移管され、審理の遅延を招かないよう、準備手続きには期限が設けられる。口頭弁論も開かれるが、1日で終了する。こういった規則が固まりつつあり、統一裁判所の設置に向けて進んでいるように見受けられる。
ただ、フォーラムに参加した皆がそう感じているわけではなく、費用分担などやっかいな問題がまだ片付いていないので、当分構想のままだろうという意見も聞いた。
会議の合間を縫ってヘルシンキに近い島にある世界遺産の城塞、スオメン写真2リンナに出かけた。波止場から船に乗って30分。1748年に建造の始まった軍事施設で、帰属はスウェーデン、ロシア、フィンランドへ転転としている。フィンランドという国の複雑な歴史をそのまま示していて、島にはロシア正教の教会があったり、大砲の筒先がロシアを向いていたりする。軍人や住民のための建物、大砲などの兵器が、海に囲まれた美しい島の高台に並ぶ。初秋の陽光を浴びながら、子供たちが無邪気に大砲で戯れていた。

ヘルシンキンの後、ロシアのサンクトペテルブルクにある特許事務所パテンティカを訪れた。19 世紀以来という古い建物を利用しながら、内部はモダンなオフィスになっている。ひょっとすると作曲家のチャイコフスキーがこの建物に住んでいた可能性があるともいう。大勢の所員に迎えられ、ロシアと日本の知財状況につて意見を交換し合った。ロシアは知財高裁が発足するほか、特許庁の運用改革に手が付けられているようだ。公務員の規律が問題になることが多かったが、透明性を高めるため、審査官との面接などは周囲に目があ写真1る開かれた場所で行われるらしい。発明の審査基準も日本とさして違わない印象を持った。旧ソ連のロシア周辺国は、ユーラシア特許制度に組み込まれ、ロシア特許庁による審査代行が行われている。ロシアは日本への特許出願を望んでおり、日本もまた、今後はロシアと周辺国をにらんだ知財戦略を立てる必要があるだろう。 (2013.10)

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