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コラム

知財風土記

第6回 
「華府ワシントン」

 国際商標協会INTAの会合に出るために、5月の始め、ワシントンを訪れた。ポトマックの桜は終わっていたが、新緑に包まれた首都はやはり美しい。華盛頓は漢字の音を当てたものだが、略称の華府は花の美しい都を示してもいる。
会期中、アメリカ特許庁に行く機会があった。ポトマック川を渡り、対岸のアレクサンドリア市に入ると、並木と建国当時の面影を残す屋並みがほっとさせる。特許庁の建物は数年前、この地に移ってきた。前のクリスタルシティーにあった庁舎には2度行っているが、ここは初めて。審査官だけでも6千人を越える世界最大の特許庁は、意外に静かだ。もっともこのうち3分の1は在宅勤務で、登庁することはまれだという。庁内を案内してくれた研修所の教官は、審査基準の統一と質の維持に腐心しているようだった。それに、出願人や代理人が面談を希望しても、こうした在宅勤務の審査官はなかなか応じてくれないという問題があるようだ。けれどもアメリカは広い国土に時差があるような国だから、審査を一所の特許庁のみで行うのはかえって現実的でないかもしれない。バイオの研究センターは東海岸に、ITの開発中心は西海岸にある。こういった事情もあって、アメリカは今後、全土の5か所にサテライト・オフィスを置く計画がある。在宅勤務の審査官は最寄りのサテライト・オフィスに時々通うことになるのだろう。
公衆閲覧室にはジェファソン大統領が自ら発明した特許の明細書などが展示してあり、特許制度の歴史がたどれるようになっている。日本の特許制度の基礎を作った高橋是清は、明治19年、当時の特許庁を訪れ、審査の仕方や書類の整理方法まで、多くの知識を持ち帰って日本の制度の立ち上げに役立てたのだった。
INTA開会のあいさつをした委員長は、インターネット時代の商標が様ざまな問題を抱えていることを指摘していた。ドメイン名は近く企業名などを上位のgTLDで使えるようになる一方、商標を含むドメイン名の先取りや、偽物商品のネット販売を通じた広がりなど、懸念材料も上げられる。INTAはドメイン名の登録機関であるICANNと密接な連絡を取りながら、問題化を先に防ぐ努力をしているという。
会期中に開かれたパネル・ディスカッションでは、フェイスブックなどソーシャルメディアの広がりと商標のあり方をめぐるテーマが、多くの聴衆を集めていた。法による規制よりも、ネットの倫理を高めるほうが当面の課題だというパネリストの発言に共感した。
INTAの最終日、グランド・フィナーレと題した立食パーティーが開かれた。その会場はNewseumという歴史的な出来事を展示している博物館だ。館名はニュースとミュージアムをかけているのだろう。9月11日にワールド・トレードセンターに突っ込んだジェット機の残骸や、FBIの犯罪捜査の実際を示す資料など、生々しいものが並ぶ。しかし、もっとも興味を惹いたのはリンカーン暗殺を伝える当時の新聞だった。この歴史的な紙の資料の持つ迫力は、ジェット機の破片以上のものがある。
帰国の日、ホテルに近い連邦議会が建つキャピトル・ヒル周辺を散歩した。中央のドームを挟んで両翼に建物が対称に広がった堂々たる議事堂は、ヨーロッパのルネサンスから近代にかけての建築を手本にしていることが明らかだ。そして、議会の背後すぐに最高裁判所を置いたのは、三権分立と民主主義の理念を、空間配置でも実現しているのだろう。列柱と三角小間を組み合わせた古代ギリシャ建築を思わせるこの建物のファッサードの上には、法の下の平等という理念が彫刻されている。また、議会の正面には何万人もの集会が可能な広場、モールが広がり、その軸線の延びたところにワシントン記念のタワーがそびえている。今日のアメリカ繁栄の基礎となる首都の建設には、周到な配慮がなされたことがわかる。
初代大統領のワシントンは秘教的な会員組織フリーメイソンの会員だった。そのことを示す記念塔が、アレクサンドリアの町にある。さらにアメリカの独立戦争を支援したことで知られるフランス人のラファイエットも、同様にフリーメイソンの会員だった。そして18世紀のフランスで公共建築や広場の設計にフリーメイソン会員が深くかかわっていたといわれることを考え合わせると、ワシントンの議事堂周辺のグランド・デザインにも、どことなくフリーメイソンの影響があるのではないかという想像がわいてくる。いまはそれを確かめたいと思っている。(2012.5)

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