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コラム

知財風土記


第1回
「香港のアジア弁理士会(APAA)総会に出席して 」

2009年11月中旬に香港で開かれたAPAA総会に出席した。香港を訪れるのは3度目。中国への復帰前と直後、そして今回である。総会の開会式では、地元の児童合唱団が清んだ歌声のポップスを聴かせたほか、バグパイプ入りのブラスバンドが耳新しかった。英植民地時代の遺風がこんなところにものぞいている。

 挨拶に立った香港の法務次官は、復帰後の経済が順調であること、一国二制度は建前だけでなく実質的に定着していること、活発な経済活動を反映してWIPO(世界知的所有権機関)仲裁センターの支所が香港に置かれたことなどを報告していた。もっとも滞在中に乗ったタクシーの運転士は、客足が何年も伸びていないと浮かない顔をしていたから、実際はどうなのだろう。

また、知的財産の保護では、狭い香港に弁護士が一万人を超えるほどいるとか、不正商品を相手に戦うにも、訴訟費用がべらぼうにかかるなどの問題も耳にした。WIPOには以前から知財紛争の仲裁と裁定を行う部署があり、この香港の出張事務所ができたというのが冒頭の挨拶だ。費用と手間のかかる知財がらみの裁判はどこでも頭の痛い問題だが、アジアが関係している知財紛争では、ジュネーブのWIPOではなく、今後この香港支所の仲裁・裁定を利用する方法も考えられるだろう。ライセンスがらみの紛争で解決に導かれた事例が、いくつかWIPOの担当官から報告されていた。

会議で話し合われたうちから、興味深い話題を拾ってみよう。

特許権者の権利を侵すものとして評判の悪い強制実施権は、日本では、特許法に、公共の利益のための経済産業大臣の裁定として定められているにもかかわらず、実質的にタブー視されている。それにはアメリカの圧力による日米合意が背景にあるのだが、エイズなどに対する医薬品への需要が多く、後発医薬品を製造するメーカーを抱えるインドや、パキスタン、タイなどでは、政府が実際にこれを発動しているのだ。TRIPS(知的所有権の貿易関連の側面に関する)協定違反にならないよう注意深く運用はされているようだが、実施権を強制的に設定させられた特許権者への補償をどうするか、という大きな問題が残る。特許の事業化に要した費用を考慮した常識的な額を補償すべきだというのが会議の一致した意見だったが、それをどう算定するかで、また、難問が待っている。

日本でも後発医薬品の製造が加速されようとしているが、WTO(世界貿易機関)の場で日本は、この強制実施権を発動することはないと表明している。いずれにしてもこうした議論の動向を、しっかり見定めておくべきだろう。 

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